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書評・出版・ 2005年8月30日 (火)

書評・百の谷、雪の嶺(米山)

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百の谷、雪の嶺
沢木耕太郎「新潮・8月号」

著名な沢木耕太郎が、山野井泰史の2002年のギャチュンカン登攀のいきさつ全てを書いたノンフィクションを読みました。その読書感想文です。



山野井泰史は同時代で最も興味深いクライマーだ。同じく才能あるクライマーの妙子夫人と奥多摩の古い民家に住み、お金のかからない暮らしをして、自分で稼いだお金だけを使って自分のやりたい山登りを自分の為に登る。正直に、登攀以外の事では(恐らく)葛藤少なく偉業を成し遂げている。

TVメディアは山野井をあまり取材できない。分かりやすい偉業が登山界から無くなって久しいが、山野井の山は誰にでもわかる世界記録ではないからだ。そして山野井も資金に困るほどの大規模な山登りをしないので、テレビで知られて、お金をもらう必要がない。でも取材ができない理由はそれ以上に、山野井と妙子が行く山は、取材者が付いていけない場所だからだ。テレビカメラが撮れる山は、本当の意味で困難な山の困難な瞬間ではない。だが文章表現の分野ではそれは可能だ。

沢木耕太郎は有名なノンフィクション、フィクションの書き手だ。ギャチュン・カンの壁に一緒についていったわけではないのによく書いている。話を聞いて、現場の麓まで行っての取材だけで、ここまで書ける沢木はさすがだ。文章メディアの羨ましいところでもある。


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垂直の記憶 岩と雪の7章 山野井泰史 2004山と渓谷社


だが昨年山野井自身が初めて書いた「垂直の記憶」を読んでいる身には、沢木の文章は、山を登らない人に山野井の存在を知らせる効能を超えていない。沢木の、気負いのない言葉の選び方、並べ方は悪くない。だが山野井自身の文章が誠実で優れている。言いたいことを実によく理解できる。「垂直の記憶」が名著なだけに、沢木の今回のノンフィクションはそれほど新しく感じなかった。ネタが先にばれていた話で勝負するには、山野井の「垂直の記憶」が凄すぎた。

山に関わり合いの無い多くの人が沢木の名前でこれを読み、山野井の行いを知る。そして特に山に限らなくとも、自分の分野の中で、山野井的な人生を意識していくとしたらそれは楽しみなことだ。
  • コメント (3)

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櫻井   投稿日時 2005-11-26 0:29
昔、沢木がメスナーにインタビューした記事を読んで感動したことがあります。あの記事は単行本等には収録されていないのでしょうか?
吉田   投稿日時 2005-11-15 16:21
本当にそう思います。「ソロ」も読みましたが、「凍」が一番面白くなく感じました。でも、「凍」を読んで山野井氏の行動を知る人が増えたら…の部分は納得しました。「凍」→「ソロ」→「垂直の記憶」で、完成されると思います。
米山   投稿日時 2005-10-30 13:09
百の谷、雪の嶺は、単行本として最近出版されました。改題して、「凍」というタイトルだそうです。1680円。「読めない本」では無くなりました!
 
 
 
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