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発行日時
2021-7-2 7:30
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Alaska, Denali, Cassin Ridge
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http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3301550.html Alaska, Denali, Cassin Ridgeへの外部リンク
記事詳細
Alaska, Denali, Cassin Ridge(アルパインクライミング/北アメリカ)日程:2021-05-04〜2021-06-20メンバー: kasaisnt nrtk7写真:West Ribを下るセスナWest Rib Cut-offフォレイカーアタック日の朝。風強い。勝利飯。ふくらはぎパンパンあとは雪壁登り。つもりがややいやらしいトラバース。Squirrel Hill登ったあと結構登った。Talkeetnaに帰ると夏でした。Medical Camp(14,000-foot Camp)South Buttress。Cassinへ向かう。5.6のスラブ。ピーク。2回とも他のパーティーはいなかった。5.6のクーロアール。ここが一番むずかったかも。West Ribの最初のクーロアールもバックステップ。氷河上で泊。Denali Passへのトラバースもうちょい。Fixの登り美しい氷河北東フォークCassin Ledge。ギリギリ2人寝られる広さだが意外と快適だった。バックステップしすぎて足痛い。2nd Rock Bandの最初の核心。5.8のピッチはアイゼン赤岩登ってれば問題ない。さようならWest Buttressには無限にルート拓けそうHanging Glacierへ。凄い雰囲気フォレイカーも小さく見える。HCよりフォレイカーCassinを見ながら降りる。疲れる。景色は最高。ヘッドウォール2p目終了点より1stRC核心1p目。Bank Houseの中。Ski Hill Campまたも狭いところで泊。フランシス80°の核心。3rd Rock Bandは右から捲く。あとはひたすら雪壁登り。JC抜けたのは薄暗くなってから。Japanese Couloirへ突入。テンバとデナリ綺麗に色が分かれた岩豪遊。セスナHigh Camp(17,000-foot Camp)ウィンディーコーナーの後。後ろにはフォレイカー。家に帰るまでが登山です。ハンター北壁ピークからのパノラマピーク(へたくそ自撮り)1st Rock Bandへ。クレバス2p目。11,000-foot CampへMCに戻ったらテント埋まりかけてた。2nd Rock Band頭より。カヒルトナピークス&ハンター&フォレイカー結構高度感あるので気は抜けない。デナリ2nd Rock Bandへ。3p目。意外と立ってる。あとちょい。下る。これは北峰。雲海。振り返るここで泊。ひたすらバックステップ。ヘッドウォールへ向かうCassin Ledgeで泊。雲海とHC。アバラッペル。11,000-foot CampWest Ribとりつき。ナイフリッジ。感想:去年デナリ全面入山禁止の報を受けて頓挫したDenali West Rib遠征。遠征が潰れてしばらくはただただショックに打ちひしがれていたが、逆にこれは来年Cassin Ridgeを狙うチャンスなのではないかと思うことにした。転んでもただでは起き上がらぬ。1年あれば十分Cassinを登れるまでに仕上げることができる。そう思い道内の岩や氷を登りまくり、あっという間に出発の日となった。5/4~5/9 アラスカ入り〜準備5/4成田空港にて集合。本当に出発できるのか半信半疑だったが、無事出発。仁川、ロサンゼルスと乗り換えてアンカレッジへ。ロス行きの飛行機では笠井はビールを飲めたらしいが、僕は韓国語で話しかけられ意味不明だったので適当に返事したらただのジュースだった。5/4(現地)ロスでの入国審査はザルだった。コロナが関係しているのだろうか。だだっ広い空港をさまよい歩いてアラスカ航空の出発ゲートへ。またもや適当な検査であっという間にアンカレッジ。アンカレッジについたときにはもう夜中だったので、タクシーで予約していたIngra House Hotelへ。そこから荷物を置いて夜食を食える所を探して徘徊するが、このご時世か、どこも早く閉まってしまい、彷徨った挙げ句コンビニで粗食を買ってホテルで泊。5/5まずは衛生端末を買いにMidtownのアウトドアショップREIへ。inReach miniやらガス缶やらを買う。もう一つのMidtownのアウトドアショップ、AMHも寄った。Downtownに北上し、安くてうまいアラスカの地ビールを買い込み、ピザ屋で夕飯を食う。日本語を勉強しているという同年代くらいの人と会話をした。5/6今日もまったり起床。各自適当に過ごす。夜はDowntownのレストランで豪遊。うまかったが二人で100$くらい使ってしまった。コロナでホテル待機とかあるかと思って入山を13日で申請していたが、そんな必要はなさそうなので、5/10にタルキートナで入山手続きをしてセスナでカヒルトナ氷河へ行くことに計画変更する。レンジャーとセスナ会社にメール送ったらなんとかなった。5/7再度REIへ行ったりして最終チェックしたあとMidtownのwalmartで食料の買い出し。雑炊用のカレールーは、北米でも安く売っているかと思っていたが、普通に日本の3~6倍の値段がする。半分カレー味、他は謎シーズニングで凌ぐことにする。3.5kgで5.5$の恐ろしいハム塊を購入。夜はその激安ハムとレタスをケチャップとマスタードで味付けしてパンで挟んだやつ。今後3日間は全てこれだけで生きた。5/8前日は今日Talkeetna行きのバスを手配して、すべての準備を終わらせてまったりするはずだったが、二日酔いで体調悪く夕方に起きる。駄目人間である。ぜんぶもう遅い。この日は何をしたか記憶にない。5/9Talkeetnaには今日には入っていたいがまだバスが手配できていない。電話使えないので色々な会社へメールを送るが無反応(公営バスはギリギリ期間外)。おまけに勢い余って昼にホテルをチェックアウトしちゃった。大量の荷物を手に、ホテルの駐車場で立ちすくむが、タクシー呼んでDowntownのLog cabin Anchorage visitor centerへ最後の希望を託して向かう。普通の英会話ですら危ういが、センターのおばちゃんの助けを借りて、奇跡的に本日16:30にビジターセンターへ迎えに来てくれるというGo Purple Shuttleという会社のシャトルバスに乗せてもらうことになった。感謝。Talkeetnaへは2~3時間で、バスの運転手さんにTalkeetnaの町を紹介してもらった。本当は僕らが乗るセスナ会社のTalkeetna Air Taxiの無料の宿Bank Houseに降ろしてもらってそこで泊まるつもりだったが、Bank Houseは満員らしく、TATのOffice近くの小屋に泊まらせてもらった。Talkeetnaは本当に小さな村で、数時間で村を全部周れそうな感じ。この日も村の酒屋で地ビールを買って飲んだ。5/10~5/27 入山〜Denali West Buttress アタック5/10 KBC(15:00)=C1僕らの寝ている小屋の前は出発するパーティーの荷物の計量所らしく、7時からずっと人がガヤガヤしていて叩き起こされた。8:30にTalkeetnaの中心のはずれにあるレンジャーのオフィスにて(今はコロナ禍なので正確にはオフィスの庭で)入山者が全員受ける必要のあるオリエンテーションを受ける。ここでDenaliを登るのに必要な許可ナンバー付きのタグや、CMC(排泄物を入れる容器)などを貰う。なお、これらは入山者の多いWest Buttresのみで必要なようだ。その後、再び泊まった小屋に戻り、荷物を整理してからあらかじめ予約していたTalkeetna Air Taxiのオフィスへ向かう。ここで3ガロンのホワイトガソリンとデポ旗を購入し、自分達の荷物を計量してから支払いをする。貴重品とその他荷物はTATに預けられる。荷物は1人56kgまでは追加料金なしだが、まさかの自己申告!僕達がどうしたかは想像にお任せして、13:30にセスナに乗っていざ出発。セスナの乗客は10人程居たが、僕達以外は皆氷河だけの観光客だった。とはいえ、僕達もセスナの窓から見える初の本格的な氷河とあちこちに点在するブッ立ち花崗岩の壁、そして巨大なデナリに興奮する。小1時間ほどのフライトでKahiltna Base CampのLanding Pointへ到着。Mt. Hunter北壁の1200mのブッ立ちがまず視界に飛び込んでくる。Mt. Francisも手頃なブッ立ちがいっぱいあって面白そうだ。Mt. Francisの東コルの向こうには、Denaliの姿も見えた。でけえ。すこし外で景色を楽しんだりしていると、ガスが晴れてMt. Forakerの威風堂々とした佇まいが見えてくる。今回は登らないが、このフォレイカーのどっしりとした姿に見惚れ、次回があれば登りたいと早くも思ったりする。Infinite Spur狙いたい。この日は外で雑炊を作り、下界で食いきれなかったレタス、トマト、例の豚ハム塊をぶち込んだ豪華なものとなった。ブッ立ち、肉、ウイスキー。5/11 C1(9:30)SHC(14:30)=C2 ガス時々雪4時に起きる予定だったが見事に寝坊して7時起き。やれやれ。バジルソーススパゲッティを食べるが米国産穴だらけジップロックにバジルソースを入れたのでバッグの中がオイルまみれになっていた。やれやれ。他のパーティーはもう行ってしまったかと思ったが、意外に同じぐらいの時間に行動開始していた。白夜で24時間明るいのでみんな各々のタイミングで行動している様だ。ソリとタイトロープの慣れない2つの要素を含む氷河歩きは、最初のカヒルトナ本流へのちょっとした下りでは苦戦したが、それ以降の登り基調になると動作面では想像よりは苦戦しなかった。でもお互いのペースに合わせるのは意外と慣れなくて大変だった。ガイド山行っぽい6人パーティーを越したり越されたり、また越したりしつつ、Ski Hill Campまで。暇だったので持ってきたウイスキーを飲み尽くしてしまった。ここから1ヶ月の禁酒が始まる(恐怖)。5/12 C2(9:00)Co3200あたり(17:45-18:00)C2(19:30)=C3 晴11,000-footまで荷上げの予定で出発。調子に乗って一泊分の装備だけ残して他の装備や食料や燃料を全て持つが、延々と続く登り坂にやられる。おまけに昨晩降雪があったのでトレースは消えており、先頭はラッセル。例の6人パーティーや、他のパーティーと交代しつつ行った。Co3000を越えるとなんか息苦しい気がする。振り返るとまるで映画のような景色。Co3200で力尽きたのでデポして来た道戻る。他のパーティーも上まで上げていたり、僕達よりも下でデポしていたりと様々だった。帰りはスキーで来た人が後ろから楽しそうに降りてきて羨ましかった。僕はこの日体調が悪く高山病かと思ったが後から考えるとただの二日酔いだったかもしれない。5/13 C3(9:45)デポ地点(13:45-14:00)11,000-foot Camp(15:30)=C4 晴軽いザックでサクサクと登り、あっという間にデポ地点へ。半分ちょっと回収して11,000-foot Campまで。荷物重いし疲れたし何より標高高くなってきたので、明日は下のデポをこのテンバまで上げたあと、Windy Corner手前まで荷物を少し上げるだけにする。5/14 C4(9:00)Co3200デポ(9:30)C4(11:30-12:00)Co4100(14:00-14:15)C4(16:00)=C5 晴→ガス陽が当たらない時間だと-15℃以下でとても寒い。しかし陽が出ると途端に暑くなり、ベースレイヤーで行動。デポを回収し、Squirrel Hillの上に荷物をデポ。Motorcycle Hillの下りはアンザイレンしたままスタカットでダブルアックスと足で制動しながらソリ下降。5/15 C5=C6 晴14,000-foot Camp(Medical Camp,MC)まで荷上げするつもりだったが、笠井が少し頭が痛いそうなので念の為レストとする。ホゲホゲ。5/16 C6(10:30)Co4100デポ回収(11:30-11:45)14,000-foot Camp(16:00-17:00)C6(18:30)=C7 晴時々ガス 行動中気温5℃くらい朝早いと寒いので今後は遅めに起きて遅めに出ることにする。ほぼ一日中行動できる明るさなので好きな時間に起きられる。Squirrel Hillの上のデポを回収して14,000-foot Campに荷上げ。左手のWest Buttressは無限にルートを拓けそう。Windy CornerのあたりでCo4000を越えてくると、流石に二人共空気の薄さを感じたので、かなりペースを落として登った。このあたりはほとんどのパーティーがアイゼンだったが、結局僕達はスノーシューで全部行った。例の6人パーティーとは行動がよく重なり、密かにズッ友と呼んでいた。MCに荷物をデポし、来た道を戻る。Windy Cornerからの下りとMotorcycle Hillの下りはまたソリ下降。5/17 C7(10:30)14,000-foot Camp(18:00)=C8 晴時々ガス 行動中気温-5~10℃今日もゆっくり起きて出発。Co4000あたりは成田は昨日より楽だったが笠井はまだ少し頭が痛くなるようだ。14,000-foot Campでズッ友の近くにテンバる。雪が堅すぎてほとんど掘れない。フォレイカーとハンターが雲の上から突き出ているのが見える。外で飯作ろうとしたが日没が近づくと急に寒くなってきたのでテントに逃げた。日が沈むとかなり冷え込み、寒すぎてよく眠れなかった。5/18 C8=C9 晴時々曇予報が余りよくないので順応も兼ねてレスト。しかし予報に反して普通に動けそうな天気だった。テントの周りに雪ブロックで要塞を築く。笠井は唯一の暇つぶしの小説を読み尽くしてしまい絶望している。FMラジオが入ったので貸した。5/19 C9=C10 晴→曇時々雪笠井の体調が芳しくないのでレスト。僕は暇なので散歩した。ガスっているときにヘリが近くを飛んでいた。5/20 C10=C11 雪停滞。こんな天気でも登っていくパーティーがいる。こんなにダラダラしていると自分達が何をしに来たか忘れてしまいそうだ。高度4300mでの筋トレはなかなか効く。夜は雪が降り続いた。5/21 C11=C12 雪雪は更に強くなって、入山してから最も悪い天気。交代で雪かきをする。日本から送ってもらっている予報が全く当たらない。雑炊の味が薄くてつらい。5/22 C12(12:00)16,200-foot(15:45-16:00)C13(17:00)=C13 ガス時々晴 行動中気温-13℃起きるとWest Buttressは見える程度の視界。やっと動けると喜んで出発。12人ぐらいのガイドパーティーの大名行列の後ろになってしまったのでちょいちょい待ちながら登る。寒いが上ホロに比べればマシ。Co4700ぐらいからfix。ユマールは持ってきてないのでタイブロックやマイクロトラクションでシコシコ登る。銀河の滝中間部ぐらいの斜度の氷で、fixなければバリエーション初級ルートとしてそれなりに楽しめそう。稜線に出ると視界50気にならない風なので、High Campまで行くのはやめてここに食料等をデポ。fixの下降は大名行列パーティーはユマールかけてロープを掴んでクライムダウンしていて怖そうだった。僕達は懸垂で下降。降りているときに、大名行列パーティーのガイドの一人のお姉さんがタルキートナまでのバスに一緒に乗った人だと判明した。夕食はウインナー入りの久々にうまい雑炊。夜は風が強く寒かった。5/23 C13=C14 晴爆風、停滞。5/24 C14(11:00)16,200-foot(14:00-15:00)MC(16:00-16:45)16,200-foot(19:45-20:00)High Camp(23:30)=C15 快晴雲ひとつない快晴。今日High Campで明日アタックする予定で出発。一昨日と同じように登って16,200-footのRidge Campへ。大名行列を抜いたりしてペースはいい調子。しかしRidge Campで思わぬアクシデント発生。デポしていた食料とJETBOIL本体とCMCが昨日の爆風によって消失。埋めていたが雪面がまるごと削られていた。秀バッグに入れていた成田の食料だけがかろうじて生き残っていた。しばらく辺りを掘ったりして探すが、ない。茫然自失として立ちすくむ。とりあえずMCまで降りてウィスパーライトと燃料と食料を持って再度上がることに。下りの途中でアルファ米4食を拾った。しかし肝心のJETBOILは……。テントに戻って色々確認したところ、幸い食料と燃料は切り詰めたり降りるパーティーから貰ったりすればなんとかなりそうだ。レンジャーテントに行ったらCMCもくれた。RCへの登り返しは荷物が軽いから楽かと思っていたが、精神的なものか、それとも疲労か、かなりヘロヘロになって登った。RCを整地して泊まっても良かったが、日はまだ沈みそうにないのでがんばってHCへ行くことに。ここからは気にならない風。普通に寒いうえに身体が暖まるペースで動けないのでビレイジャケットを着込んで歩く。HCまでの稜線は岩稜で、意外と2年班レベル。コンテで通過し、所々スノーバーが刺さっているのでそれにランナーをかけていった。一箇所fixもあった。雲ひとつない絶景で楽しい所なのだが、とにかく疲労がやばく、笠井は血の味のする?咳をしながら、成田は吐き気を覚えながらおじいちゃん並のペースでヒラヒラになって歩く。最後らへんは二人共一歩ごとに変な声を出しながら何とかHCへ着。大名行列パーティーのテントの近くにブロック軽く積んでテント張って中に倒れ込む。高所で長時間行動するつらさを知った。5/25 C15=C16 晴風が強いので停滞。二人共微妙に頭が痛い。昼頃起きてテンバのブロックを補強。完成間近というところで大名行列の一人にすごい剣幕でテント近すぎるんだよfuck youと口汚く罵られ唖然。なんだこいつと思いながらも揉めるのもだるいので少し遠くにテントを移動。ブロックを積み直しているとそのパーティーの他の人が謝りながら手伝ってくれた。夜は更に風が強まり、ブロックを補強した。5/26 C16(13:00)Denali(18:50-19:00)C17(21:00)=C17 晴時々曇今日を逃すとしばらく悪天予報。9時頃出てみるが風強く即テントに退散。ピークには笠雲がかかっていて厳しそう。これは無理かもねと思いながら12時頃外を見てみると、多少弱まっていたのでDenali Passで引き返し判断として出発。ザイルは不要と判断してザイルハーネス等は置いていった。他のパーティーはほとんど諦めて降りているようだ。Denali Passへの登りは急だがトレースがしっかりついている。所々スノーバーが刺さっているので不安ならピン取れる。デナリパスで風は気にならない程度だったのでピークへ向かう。風は北〜北西で、デナリ北峰には絶えず雲がかかっているが、そのお陰で僕達の進路は時折ガスる程度。しかしなから気温-30℃近くに加えて風があるので身体が冷える。Archdeacons Towerの辺り手前で、ビレイジャケットをテントに忘れた笠井が寒いので下りると言い出し、仕方がないので成田のダウンを貸す。トレースはあちこちにあるが、今日アタックしているのは僕らだけ。この時期にデナリを独り(二人)占めする。なんという贅沢、と言いたいところだが高度や風や気温でそんなことを考える余裕もなくとにかく無心で登る。フットボールフィールドからデナリ頂稜を眺め、「あと少しだ」と呟くが内心まだこんな登るのかと思った。最後の急登を終えてリッジに出たKahiltna Hornにてようやく風を避けられたので一休み。そこにザックを置いて頂上まで百メートル程のナイフリッジを登る。息はすぐに上がるが、立ち止まると身体が冷たいのでひたすら歩く。最後はよくわからない雄叫びを上げ、ピーク。誰もいない。雲海、氷河、山。ハンターも、フォレイカーも、みんな小さく見える。程なくして笠井も山頂に着き、握手を交わす。へたくそな自撮りを撮って、ぼーっと景色を眺めて、叫んで、寒くなったので下りる。下りも無心で歩き続け、しかし緊張は解かずに、ヘロヘロになってHigh Campのテントに転がり込んだ。HCには、僕達と大名行列パーティーしかいなくなっていた。例のガイドのお姉さんが祝ってくれた。彼女等は"Maybe"明日アタックするそうだ。予報は悪そうだが……。結構ギリギリの条件のアタックだった。二人とも頭が痛い。テントの中で火を炊いて、生を感じる。5/27 C17(10:30)MC(15:30)=C18 ホワイトアウト8時頃起きると、テントが積雪で潰されそうになっていた。急いでテントから出て除雪。辺りはホワイトアウトしている。今日から低気圧直撃で天気は悪くなる予報だったが、予想よりも早い。風もあり、この条件でWest Buttressを下るのは微妙だが、今後更に悪くなる予報で、食料もそれをやり過ごす分はないので、頑張って降りるしかない。飯を食って、カシンから降りてきたとき用のデポを埋めて出発。念の為アンザイレンして行く。ほとんど視界のない中、左手の地形を見ながらラッセルして磁石と記憶を頼りにWest Buttressの稜線へ入る。ここから気温-22℃、視界10m、強めの気にならない風の条件で岩稜を下っていく。顔面は即座にビバ上ホロならぬビバデナリ状態になり、氷漬けである。トレースは消えているが時々現れるスノーバーに適宜ピンを取って降りていく。岩が出ていると逆に稜線がわかりやすいので助かる。氷の斜面を慎重にバックステップを交えて降りたり、ホワイトアウトした稜線に目を凝らして境目を見極めたりして、MCへ降りる斜面のFixまでたどり着く。Fixは埋まっており、掘り起こして懸垂。その下の斜面も結構積雪があり、雪崩が怖い斜度なので、最初の4psはスタカットで、その後はコンテで下降。トラバースは避け、できる限り真っ直ぐ降りる。ホワイトアウトしているがしばらく降りると下の方に黒い影が見え始め、やがてそれはテント村と人だとわかり、そこへ向かって降りていく。テント村に到着してようやく安心。みんなまさか今日上から降りてくる人間がいるとは思っていなかったのか、亡霊を見るような目で見られた。話しかけられ、昨日ピークに行ったと言うと驚かれた。デポしたテントは埋まりかけていた。掘り起こし、整地してテントをもう一張張って泊。今日はルームで培った能力を総動員した一日になった。登頂を祝してウインナーとサーモンツナ入りの雑炊に、焼いたベーコンを載せた豪華な夕食を食って腹いっぱいになって寝る。ビールが飲みたい。だがこれからが本番だ。5/28 C18=C19 晴至福のNatural Get Up。なぜか天気がいい。昨日頑張って降りた意味……。昼頃起きてテントの周りに要塞を築く。日本人の単独行者と会って話す。海外の山ではmont-bellは日本人の目印になる。5/29 C19=C20 ガス、強風今日は予報通りガスガスで強風。テントに引きこもる。5/30 C20=C21 晴明日から出発のつもりだったが、6/3から高気圧の予報が一気に変わり低気圧直撃に。これでカシンはほぼ絶望的になった。一気にどん底に突き落とされ、失意の中眠りに就く。5/31 C21=C22 晴一晩落ち着いて考えた結果、一縷の希望を託して6/5まで粘り、その間のちょっとした好天でWest Rib上部も登ることにした。指定された巨大クレバスにCMCの中身をぶん投げに行ったり、散歩してカヒルトナ北東フォークを眺めに行ったりした。タコス雑炊(おいしくない)にマリームを入れるとそこそこ美味くなることが判明した。夜の予報でカシンの可能性はほぼなくなった。6/1 C22=C23 雪僕らは"運悪く"カシンに取り付けないのだと思っていたが、よく考えるとそれは違うのではないかと思い始めた。僕達は"高気圧圏内の確約された数日間の好天"を狙って取り付くつもりでいたが、天気の不安定な、そして読めないアラスカでビッグルートを登るには、そもそも多少の悪天でも臆せず登り、生きて下りてくるという精神力とそれを裏付ける経験か、わずかな好天を長時間行動で動き続け、スピーディーに登り切る圧倒的な体力とスピードのどちらかが必要不可欠なのではないだろうか。つまり、それらを持ち合わせていない僕達は"アルパインクライマー"には程遠い存在であり、カシンリッジを登るには値しない人間だったということだ。そんなことを思っていたら予報が変わりなんか行けそうになった。急いで支度をして寝る。6/2~6/7 West Rib下降〜Cassin Ridge登攀6/2 C23(8:30)West Rib合流(11:30)West Rib上Co4100(18:00-20:00)Northeast Fork上(25:00)=C24 晴しっかりと眠れずに出発。West Rib Cut-Offへの登りには昨日の夜のものと思われる真新しいトレースがあった。トレースのおかげもあり快調にWest Ribへ合流。トレースもWest Ribを下っている。もしかして…。West Ribの下りは最初は200m程の緩い氷の斜面をスクリューでピン取りながらコンテでクライムダウン。その後氷混じりの岩稜。リッジ上を岩角にかかっていた残置シュリンゲでab30m。その下も微妙だったのでアバラコフ直通しでab30mでリッジ東側の安定した雪面に降り立つ。このあたりでトレースとはいつの間にかおさらばしていた。雪面を岩、スノーバー、スクリューでピン取りながらトラバースしてナイフリッジに復帰して下るとまた面倒そうな岩稜。東側の氷の斜面をアバラッペル60mで雪面に下り立ち、クレバスのある雪面をコンテでしばらくトラバース気味に下りると傾斜の落ちた雪のリッジ。所々急だったりヒドンクレハスがあるので一応コンテで下降。Co4100で、意外とペースが早く、West Rib下部のクーロアールをもう少し気温の低い時間で下降したいので時間待ち。テント張って夕飯食って再び出発。しかしここからが長かった。しばらく緩い斜面を下りると急な雪のリッジになったのでひたすらバックステップ。結構下にクーロアールが見えたがそこまではとにかくバックステップで下る。足が疲れる。一応コンテでピン取りながら行った。クーロアールはWest Ribの核心だと思っていて、ひたすらアバラッペルだと思っていたが、何かただの雪の斜面になっていて全部クライムダウンで下降。所によっては前向いてすら下りられた。しかし一生分したんじゃないかと思う程バックステップして、足の疲労が半端じゃない。ヘロヘロになってNortheast Forkに降り立つ。薄暗くなってしまったが、カヒルトナノッチの下のあたりがギリ安全そうに見えたのでそこに泊。アプローチで既にヘロヘロである。6/5 C24(10:30)Japanese Couloir取り付き(12:30-13:30)Cassin Ledge(24:30)=C25 晴時々雪前日の疲れがあまり取れていない。脚の色々なところが痛い。予報も芳しくない。とりあえずサクッとCassin Ledgeまで行ってしまおうと出発。2時間ほどデカいクレバスの開いた氷河歩きでJapanese Couloir下のベルグシュルントまで行って登攀準備。West Rib Cut-OffのトレースがWest Rib側壁のズタズタ氷河を下降してCassin Ridgeに取り付いていた。そんなのありかよ。ということで以降だいたいトレースがあった。クーロアール内は支点はスクリュー、アバラコフ、カムナッツ等でいくらでもとれる。Japanese Couloir1p目 50m 成田 ベルグシュルント越えが意外と難しくトップは空身で越えてすぐ上で吊り上げた。その後は50°くらいの氷。氷質は層雲峡風。2p目 55m 笠井 50°くらいの氷だが、重荷のせいか、昨日の疲れか、ふくらはぎが一瞬でパンプする。下部はタイブロックコンテでサクッと登るつもりだったが、とにかく疲れるのでスタカットで登ることにする。3p目 55m 成田 狭めのクーロアールに突入。トポだと50°になっていたが、1箇所70~80°ぐらいのところがあった。高度と重荷と疲れで北海道で登るより遥かに疲れる。4p目 55m 笠井 傾斜の緩い雪〜氷で傾斜の強い氷の下まで。雪が時折降ってチリ雪崩が上から降ってくるようになる。5p目 50m 成田 クーロアールの核心ピッチ。岩と氷のミックスを少し登った後、80°の氷。普段ならこの斜度は余裕で登れるが、重荷やら疲れやら高度やらで一瞬でふくらはぎがパンプして息ゼーゼーで抜けた。北海道でWI5+を登るのより疲れた。このピッチを登っている最中にWest Ribの側壁で物凄い雪崩が起きた。ひえ〜。6p目 120m 笠井 しばらく簡単そうに見え、時間も結構かかっているので2.5p分程マイクロトラクションコンテで登った。50°ぐらいの氷と雪。7p目 100m 成田 ここもマイクロトラクションコンテで2p分つなげた。60°くらいの氷〜雪。ナイフリッジに出るが支点取れなかったのでリッジを少し行ってCassin Ledgeの横の岩角まで。想像より遥かに時間がかかり、疲れた。傾斜から判断して楽勝かと思っていたが甘かった。重荷を背負って傾斜の緩い硬い氷をひたすら登るのは結構な重労働だった。ヘトヘトでCassin Ledgeへ転がり込む。ここは大人二人がちょうど横になれる岩棚だが、整地しなければテントは張れなさそう。クラックから支点作ってセルフとり、岩棚の雪やら氷を削り、テントを張って飯食って結局寝たのは27時過ぎ。アヒアヒ。6/4 C25(13:00)Crux Gully終了(15:30)Hanging Glacier Bivy(18:00)=C26 晴2日間の行動で大分疲れたのでゆっくり起きる。よく寝たので身体の調子がいい。昨日の反省を活かしてトップのザックは軽くする。コンテで岩と雪と氷のミックスを登り、5.8のCrux Gullyの取り付き。ここは成田リードで登る。アイゼン赤岩?〜?級程度でそこまで難しくないがチムニーっぽいのでザックが引っかかってうざかった。その後は笠井がトップでコンテでKnife-Edge Ridgeを7p分ぐらい。たまにスノーバーやスクリューでピン取れたが、基本的にあんまり取れない。ここはトレースのお陰で大分楽させてもらった。これが終わるとルート中随一の快適テンバHanging Glacier Bivy。先行パーティーはここで泊まった様だ(ちなみにこのパーティーの泊まった痕跡はここにしかなかった。強い……)。僕達もここで泊。6/5 C26(6:30)1st Rock Band突入(8:30)2nd Rock Band突入(16:00)Triangular-shaped roof下(20:30)=C27 晴→雪笠井トップでコンテで出発。Hanging GlacierのOverhanging serac wallは一箇所繋がっているところがあったので大分楽に越えられた(マイクロトラクションコンテ)。その後雪面登ってコンテのまま1st Rock Bandへ突入。1st Rock Band簡単な岩と氷と雪のミックスをマイクロトラクションコンテで2~3p分登り、傾斜の強くなった70°mixedのところでスタカットに切り替える。1p目 50m 成田 岩と氷のミックスを登り、右側壁の残置ハーケンのあるクラックを一段乗っ越して緩い氷の斜面に上がる。そのまま15m登って再び岩と氷のミックスを登り狭いクーロアールに入り、そこの岩を使ってビレー。2p目 50m 笠井 クーロアールを15m程登り、緩いミックスを登った後、立ったチムニーを越えて岩でビレー。3p目 50m 成田 雪面を20m程登ってもう何もないかと思ったら立った岩が出てきた。意外と難しめの岩を10mほど登って緩い雪壁になるところでビレー。その後は簡単な岩混じりの雪壁だったので笠井トップで再びコンテ。リッジに出てしばらくそのまま進み、コンテのまま2nd Rock Bandへ突入。2nd Rock Band簡単な?岩と氷と雪のミックスをまたもやマイクロトラクションコンテで2p分登り、70°mixedの傾斜が強くなってきたところでスタカットに。成田リードで70°mixed、というより、ほとんど岩の5.6ぐらいを50m程で傾斜の緩いところでビレー。意外と登りごたえがあった。笠井がザイル引きずってTriangular-shaped roof下の岩棚のBivyまで。天気、時間、Bivyがいい感じなことからここで泊まることに。クラックから支点作り、またも雪やら氷を削ってテント一張分のスペースを作って泊。変なところに泊まるのも慣れてきた。6/6 C27(7:45)2nd Rock Band上(10:45-11:15)3rd Rock Band上?(15:00)Co5400(18:00)=C28 晴 気温朝-20℃夕方-5℃次の2pは5.6のピッチなので、テンバの支点でビレーしてスタカットで出発。1p目 55m 笠井 5.6 雪壁のトラバース〜登りから、短いスラブを登り再び右トラバースで岩でビレー。2p目 50m 成田 5.6 頭上のクーロアールに入る。スラブ〜緩い氷を登って意外と難しい立った岩をのっこし、雪壁から最後の簡単な岩を越えて2nd Rock Bandの頭に出て岩でビレー。5.8のピッチよりここのほうが難しく感じた。これで技術的な核心は終了し、ここからコンテで3rd Rock Bandを巻く雪のトラバース〜クーロアールを登るのだが、よくわからなくなかったのですぐにあった雪のクーロアールを見てみる。しかしその下部は岩でちゃんとクライミングしなければ登れなさそう。もっとトラバースするのかと右の方を見てみるが、流石に巻きすぎだろうということで、最初のクーロアールを行くことに。左の雪壁から岩と氷の3級ぐらいのトラバース1pで突入し、その後はコンテで雪壁を登り3rd Rock Bandを巻いた。巻き終わった右の広い雪壁にトレースがあり、結局もっと大きく巻くのが正解だったようだ。コンテで進んでトレースに合流し、リッジに出て次の岩を左の雪壁から大きく巻いた後、ナイフリッジを行ったところで一休み。以降はザイルがただ重いだけで意味なさそうなのでしまった。その後は岩や雪のリッジをひたすら登る。が、高度の影響で、二人共笑っちゃうぐらいゆっくりとしか登ることができない。アヒアヒになりながら登り、Co5400のボルダーのそばにここに泊まってくださいと言わんばかりのテント一張分の平坦地があったので喜んで泊まる。6/7 C28(7:00)Summit(10:45-11:00)HC(13:00-13:30)MC(15:00)=C29 晴気温-31℃。さむい!急なリッジを登り、その後岩混じりの斜面を縫うようにして登る。ペースは昨日よりはマシだがそれでも数歩ごとに呼吸を整えなければいけない。わかってはいたが全装で6000mを越えるのはしんどい。デナリを“のっこし”た先輩方の偉大さを感じながら登る。岩混じりの斜面を登り終え、リッジに上がると後は雪面をひたすら(に感じるが多分距離は大したことない)登ってカヒルトナホーンに出る。ここにザックを置き、ピークに空身でポン。堅い握手を交わす。なんと今日も誰もいないピークだった。風があって寒いので写真撮ってピークを後にする。フットボールフィールドで休憩して、HCまで下る。前に来たときよりトレースが明瞭になっていて、まるで登山道のようになっていた。でもデナリパスへのトラバースはグズグズの風成雪で覆われていてちょっと状態悪かった。HCでなんとかデポを掘り当てて、MC目指し再び下る。West Buttressもトレース明瞭で、急な斜面には親切にカッティングも施されていて全部前を向いてサクサク下りられた。Fixをスルスル下りて後は長い斜面をひたすら下りてMCへ帰還。MCのテントは更に増えていて、本当に村のようだ。僕達は多分最古参だろう。肉と雑炊を食って久々の平らな大地で寝る。6/8 C29=C30 曇時々雪MCでまったりと身体を癒す。安全テンバで時間を気にせず横たわれる喜びをかみしめる。6/9~6/11 下山6/9 C30(14:00)Ski Hill Camp(21:30)=C31 曇→吹雪まったりと出発。ソリの下りは想像通りコントロールが難しく腹立たしい。スキーヤーに華麗に追い抜かれていく。ウィンディーコーナーのあたりで風が出てきて、11,000-foot campから下りているあたりで吹雪になり、ほぼホワイトアウト。デポ旗やトレースを見失いこのまま進めるのも微妙なので整地して泊まろうとしたら、後ろからスキー集団がやってきた。俺達についてこい的な感じになり、ずりずりと後ろを歩いてSki Hill Campに何とか着。6/10 C31(12:00)Kahiltna Base Camp(15:30)=C32 曇時々雪氷河は来たときよりもクレバス開き気味になっていて、トレースを行くが時折ズボズボはまりながらKBCまで。Mt. フランシスに向かって、白石さん達に黙祷を捧げる。フランシスからは、常に石やら雪やらが崩れ落ちる音がしていて、近寄り難い雰囲気だった。BCマネージャーのお姉さんは僕達のことを覚えていてくれた。他パーティーの人に日本人でカシンリッジを登ったと言うと「Are you Girigiri Boys?」と聞かれた。流石に畏れ多い。セスナが来るのを待つが、今日は先に着いたパーティーが飛び立っていったのが最後で僕達は明日の朝飛ぶことになった。余った食料で豪華な食事を食う。6/11 C32(9:40)タルキートナハンター北壁を眺めながらセスナを待つ。垂直だけの冒険にはあまり興味がなかった僕だが、この壁とそこを走る無数の氷の線を見ているうちに、だんだんと登りたくなってきてしまった。楽しそうだ……。程なくしてセスナが到着し、乗り込む。セスナが飛び立ち、無数の名もなきブッ立ちをかすめて、岩と氷だけの世界から遠ざかっていく。氷河はやがて大河となり、モノクロの世界に緑が加わって生命の息吹を感じ始める。タルキートナに降り立つと、初夏となっていた。新緑が目に眩しい。僕達の長い冬が終わった。レンジャーステーションに行ってチェックアウトをする。CMCを返却して軽く質問を受けた。CMCを一つ失くした旨を伝えると、150$請求された。高え。TATのBank Houseに荷物を移動し、1ヶ月ぶりのシャワーを浴びる。Bank Houseは、セキュリティもなにもない一軒家で、勝手に何日でもいられそうだ(決まりとしては一回のフライトで2泊らしい)。世界中の登山者の足跡が残されており、本棚には大量の日本語の本が置いてあった。植村直己が泊まったというモーテル兼レストランLatitude 62にて豪勢な食事。勿論、1ヶ月ぶりのビールも。五臓六腑に染み渡った。Bank Houseに戻って、ビール飲んでつまみを食いながら本を読み耽り、いつの間にか眠りに落ちていた。6/12タルキートナ歴史博物館へ行く。タルキートナとその開拓の歴史や、アラスカ鉄道の説明などがあるが、デナリの登山博物館がやはり最も興味深かった。植村直己を偲ぶコーナーもあり、時代や国を超えて愛され続ける彼の偉大さを改めて実感した。夜はMountain High Pizzaというピザ屋。流石に豪遊しすぎたので、以後自炊とする。Bank Houseに戻るとひたすら本を読んだ。官能小説も見つけた。6/13タルキートナは、入山前は閑散としていたが、今は避暑地のような感じなのか観光客で賑わっていた。適当に散歩して、緑を楽しんだ後、アンカレッジへ向かう。行きも利用したバスGo Purple Shuttleに来てもらった。Qupqugiaq Innという怪しい雰囲気のホテルに泊。Qupqugiaqとはアラスカの民話に出てくる十本脚の熊だそうだ。Walmartで飯を買ってビール飲んで寝る。6/14各自適当に散歩。宿泊費をカードで払おうとしたらエラーで払えなかった(笠井はカード忘れたので持ってない)。手持ちの現金も足りず、フロントのおばちゃんに凄い剣幕で話しまくられ(8割方関係なさそうな話だったがよく理解できなかった)、結構絶体絶命になり、最悪有り金かき集めて二泊分の金を払って宿を出てどこかで野宿をするかと思ったが、カード会社に電話できて事なきを得た。6/15フロントのおばちゃんは何事もなかったかのようにフレンドリーになっていた。在アンカレッジ領事事務所に行って陰性証明書を出してくれる医療機関を聞いた。医師のサイン貰えればOKっぽいので、近くの図書館でVisit Healthcareという団体が無料でやっている検査を受けることにした。その後は各自適当に行動。僕はCoastal Trailという海沿いの遊歩道を散歩した。いい景色だった。Anchorageは自然と町のバランスが丁度よくて住みやすそうだ。6/16図書館で検査を受けた。結果は翌日メールで来るらしい。その後ダウンタウンに行き、アンカレッジ博物館を見学してから土産を買った。6/17ホテルをチェックアウトして、タクシーで空港へ向かう。出発は翌早朝4時なので、空港の椅子でダベる。PCRの検査結果が、笠井は15時頃届いたが、僕は中々来ず、このままだと出発に間に合わないと焦ったが、24時ぐらいに届いて一安心。空港では無料でコロナワクチンを打てたらしい。6/18シアトル・タコマ空港で、仁川行きの飛行機に乗り換え。陰性証明書の提示を求められ、果たしてこの無料で手に入れた手書き陰性証明書で大丈夫なのだろうかと今更不安になるが大丈夫だった。このときに日本政府の位置情報確認アプリとかもインストールさせられた。機内では今度は無事ビールが飲めた。6/19夕方に仁川国際空港着。成田行きの飛行機は翌朝発なので、仁川でひたすら時間を潰すことになる。このご時世なので多分韓国に一時入国とかもできなさそうだ(多分)。仁川国際空港は乗り換えの多い空港なので、乗り換え客用の設備は充実している。くつろげる椅子で本を読んだり寝たりして気がつけば朝だった。本当は無料シャワーとかもあるらしいが今は閉鎖されていた。6/20機内で誓約書とかなんか色々書かされた。昼に成田着。今回仁川、ロス、アンカレッジ、シアトルと色々な空港に行ったが、成田の到着ロビーはなんか殺伐として空気が死んでいる。ウェルカムムードはゼロ。まあ当然か。必要書類を確認され、唾液を採取され、スマホに入れた位置情報確認のアプリとかの説明を受けて設定し、検査結果が出るのを待ち、数十分ほどで結果が出て陰性だったのでようやく入国。公共交通機関は使えないので二人共親に迎えに来てもらい、解散。二人とも初の海外、高所登山だったが、目標のルートを登ることができた。これまでのクライミングの経験をフルに発揮して、デカい山でクライミングすることができ、とてもいい経験ができた。しかし今回の成功は、運よく天気がちょうどいいタイミングである程度の日数で持ってくれたおかげであることも否めない。体力とスピードがもっとあれば、もっと短い日数で素早く登ることができる。そしてそれはわずかな間の好天もチャンスに出来ることを意味する。とにかく複数日長時間動き続ける経験と能力がまだまだ足りなかった。(僕たちの数日後に女性がソロでスキー担いで14時間でカシン完登したらしい。トップクライマーとの実力の差を思い知らされた。)今回の遠征で、自分たちの実力が世界でどれだけ通用するのか、また、何が足りないのか、これからどういうトレーニングをすればいいのか、ということを、強烈な実感を伴って学ぶことができた。とりあえずまた道内でトレーニングして、金が貯まったらどっか行きたい。ルートの感想West Buttress: アイゼン歩行に慣れていれば問題なし。変な天気で突っ込まなければ大抵他のパーティーがいたりトレースがあったりする。West Rib: 舐めていたが登ったら割と楽しめそう。去年の利尻の簡単めな稜(東稜、東北稜、長浜ダイレクト等)ぐらいのレベルか。スクリューが予想より遥かに使えた。Cassin Ridge: 銀河の滝×2.5〜赤岩の?~?級〜OP尾根〜上ホロ正面壁のクーロアール×3〜上ホロ北西稜、という感じ。技術的には特に難しくないがとにかく体力が必要。上ホロ、層雲峡、利尻等で長時間行動を複数日続ける準山をやったほうがいい。悪天に捕まると降りることすらできなくなるので、天気判断は重要。ただしルーファイは難しくないのでガスっている程度であれば行動可。核心は天気と体力なので、素早く抜けられるパーティーであればあるほど、チャンスが多くかつ安全。プロテクションは岩と氷でほぼどこでも取れる。アプローチは北東フォークとWest Rib下降があり、今回はWest Ribを下降した。北東フォークは入り口やWest Rib取り付き下流付近はかなりズタズタで大変そう。また、今回北東フォークの近くにいた数日間だけでも、かなりヤバい雪崩を何度も目撃した。この谷に降雪中または後に入ると高確率で死ぬのは間違いない。West Rib下降は、そういう運要素はなくなるが、延々と続くバックステップが結構しんどい。懸垂するほどの斜度ではないが、お気楽にほいほい下れるような斜度でもなく、気を抜けず精神的にも疲れる。どちらも一長一短でどちらがいいかは一概には言い切れない。カシンを1~2日で登る強いパーティーだったらWest Rib下降のほうがリスクは少ないだろう。装備靴は成田はスパンティーク、笠井はベガ手袋はMCまではホームセンターのネオプレーン手袋とテムレスで行けた。Co5000あたりからはニトリルゴム手袋+ウール手袋+オーバー手。カシンの時は五本指オーバー手でピーク行けた。衣類は上はfinetrackドライレイヤー、finetrackメリノスピン、mont-bellのULサーマラップ、finetrackエバーブレスアクロ、mont-bellフラットアイアンパーカ、実家にあったmont-bellのダウン下はfinetrackドライレイヤー、メリノウールのタイツ(どこのか忘れた)、finetrackのフリースパンツ、mont-bellのULサーマラップ、finetrackエバーブレスアクロピーク登頂時はこれらを全部着た。イメージとしては上下とも上ホロ+1枚。寝袋はISUKAのAir+810。MCではテント1人1つで寝たが、たまに寒い時があった。カシンでは気温の低い時間に行動して昼間寝るスタイルにすれば寝袋軽いのでも行けるかも、と思った。テントはmont-bellステラリッジ2人用×2。WBアタック時とカシンでは1つはMCにデポして1つだけ持っていった。これしか持っていなかったのでこれで行ったが、カシンではもっと軽いシングルウォールテントをお勧めします。ストーブはMSRウィスパーライトインターナショナル。燃料はホワイトガソリン3ガロン。本当はWBアタックとカシンの時はJETBOILのつもりだったが、紛失したので全部ウィスパーライトで行った。食料は朝ラーメン(茹でずにお湯で戻した)+マッシュポテト、夜雑炊、行動食ビスケットピーナッツレーズンチョコレートorクリフバーWBアタックとCassinの時は朝ラーメン+マッシュポテト、夜α米+フリーズドライ+ラーメン。アックスは2人ともPetzl Quark×2。アイゼンはPetzl LYNX。衛星端末としてinReach Mini。札幌の現役にMountain Weather Forecastの天気予報を送ってもらった。が、当たらないことも多々あるので気圧配置なども送ってもらった方がいいかも。
 
 
 
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