長谷伸宏
29日夜, 今井, 三谷と三人で, 暖冬続きで軒並みに積雪0cmが出ている中を一路大山に向かった。駐車場に着いても降ってくるのは雨。 テイトサイトにも水がたまっている。 全然, 凍っていない。「こりゃ、冬山とちゃうでー。」
次の朝、雨が降っている。回りのテントも動く気配はない。 今日は沈と決定。寝ていたら少しは寒くなるだろう。
翌日は前日休んだ分、今日はしっかり動かなければと, 6時半に出発する。 元谷小屋から上を見ると、1,500mから上、ガスっていた。 とにかく別山に出る尾根に取りつくとして, 右よりに進む。春に来た時と比べると雪はずっと少ない。 小さな沢をトラバースして別山バットレスに取りついたつもりが、実はこれが「幻のカンテ」だった。一本まちがっていた。 4・5ピッチ,ブッシュの生えた細い尾根を登って行くと, 「こりゃ, おかしいな。」と思う。 でもやばくないからいいんじゃない。いける所まで行って, だめなら敗退すればいいや、ということでブッシュの中で格闘すること5時間。 1ピッチの岩場を越えると, ドカンとでっかいカンテが目の前に現われた。 「こりゃ、あかん。ハーケン持って出直そう。」 ということで撤退する。 帰着は7時頃。 長い1日が終った。
しかし, 元日の方がもっと長かった。 同じく6時半に出発し, 今日は屏風岩に取りつこうと出かける。 ほんの少しちがいで, 3人パーティーが取りついたのでしかたなく右端のリッジに取りついた。トップはほとんど三谷さんがし,かなりヤバイルートをそろそろ登って行く。 岩が凍っていないので、アイゼンも上手にのらない。 緊張の連続で, 雪壁に抜けた頃はもう3時を回わっていた。もう雪ばかりをねらって抜ける。 「ああ、腹へった。」と剣ヶ峰にたどりついたのは5時40分。薄暗くなっていた。でも、みんなあまり急がないので、私もあきらめて, お茶を飲み, 行動食を少々口に入れ,ライトをつけて歩きだした。 ユートピアの小屋まででも行きたいと思うが,急ぎすぎたらしく気がついた時はもうキリン峠まで来ていた。 「こりゃあかん」 と道標にツェルトを張ってもぐり込むともう8時だった。 今井さんも 三谷さんもビバーグ慣れしていて,さっと着込んで,シュラフカバーにもぐり込む。三谷さんはいびきをかいている。私は動いていたままの格好ですわり込むだけ。長い長い夜が明けた頃には、足も腰も固まってしまっていた。 でも天候はド快晴!
北壁をしっかり目に焼きつけて、ゆっくりと下った。こうして長い長い元旦の行動が終った。早く再挑戦して厄払いをしないといけないと思いながら帰途についた。 こうして私の楽しい, 楽しいお正月は終った。ああ、しんどい休日や!!