42 山の人達 高橋文太郎(たかはしぶんたろう)/1938/龍星閣/328頁
高橋文太郎(1903-1948) 民俗学者
東京府保谷村(現西東京市)に生れる。1927(昭和2)年、明治大学政経学部卒業。同大山岳部OBで、同部創立者の1人。北アルプス、尾瀬を中心に活躍した。武蔵野鉄道(現西武池袋線)重役。鉄道退職後、民俗学研究に専心し、マタギ、木地師など山の生活者の調査を行なう。1937(昭和12)年、民俗学の研究を共に行なってきた銀行家の渋沢敬三に協力して、生地の保谷に民俗博物館を創設する。ここを拠点に各地に旅し、マタギ、木地師など主に山で暮らす人々の民俗について調査研究を行なった。しかし1940(昭和15)年、理由は判然としないが、渋沢と決別し、民俗学から離れる。
日本山岳会理事として「山岳」の編集に携わる。
内容
山を愛する民俗学者が、折にふれて書いたエッセイから15編をまとめたものである。序で「内容は華々しい登攀の記録では勿論ないし、民俗学関係のやや専門がかったものは省くことにした」と述べている。内容は「山と民俗と」、「秋田マタギの印象」など山の民の暮らしと「外来者の登山」などの登山文化史からなる。著者は自身の登山行為について次のように規定するが、真に幅の広い山登りである。山に住む人達の調査は、奄美から東北の山々に及ぶ。アルプスの登山家マーティン・コンウェイや山岳画家たちの伝記は、多くの文献を読破して紹介している。登山史に興味のある人に恰好の書である。
「山登りの世界には、どこまでも行為を遂行して新記録を作ろうといふ思想の流れと、第一義の目的をさういふ記録にのみ置かず、山をもっと広く考えて思索の対象とする思想の流れがあることが見受けられる。私がここで取り扱おうとする山は広い意味に解して、山をめぐる山村、その村に住む人たち、山の見える村人の心理に宿る山の頂、それらに関する信仰、感覚、口碑など、又は登山を経験する者の知る山、その者の社会生活に這入ってくる山とそれへの思慕、かういふ総てに亙る範囲までを含ませたいと思ふ。」
山岳館所有の関連蔵書
山と人と生活/高橋文太郎/1943/金星堂
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山の憶い出(上)(下)/木暮理太郎/1938 |
瀬戸君・高田君追悼録/湊正雄編/1939 |