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詩誌“さとぽろ”

坂本直行氏遺品寄贈品

 坂本家から寄贈のあった「さとぽろ」は北大の学生が大正14年に創刊した版画と詩の雑誌で、伊藤秀五郎、伊藤義輝(北大山岳部部報表紙の作者(資料1))が同人として参加している。
 学生の同人誌としては異色の雑誌の出版経緯について、同人代表の外山卯三郎は次のように述べている。(資料2)
「当時フューチャリズムを先端とするアヴァンギャルド版画が盛んに日本にも紹介されて、非常な勢いで青年たちの関心をひいていたのです。ところが大正十三年の秋から十四年の春にかけて、レアリズムの木版画を中心とする<詩と版画>という雑誌が出はじめていたのです。大正十四年(1925年)の春休みをおえて、札幌に帰ったわたくしは、友人たちとこの<詩と版画>をモデルとした月刊誌を出そうという相談をまとめあげたのです。それが札幌における雑誌<さとぽろ>の出発で、この時の同人が八人で北海道大学の学部と予科の学生、それに予科の先生という変わったものだったのです。雑誌名を<さとぽろ>としたのは、医学部服部光平君の主張で、バチェラーさんのアイヌ語辞典によると<さとは乾燥すること>で<ぽろは大きい>、つまり大きな地という意味だということで、このアイヌ語源をとって、<さとぽろ>としたのです」

 伊藤秀五郎は創刊号に<枯林の春愁>他4編の詩を、坂本直行は第6号(大正14年11月)に「静物」「石狩風景」の2点を出品している。外山卯三郎は直行の作品を評して「直行君の<静物>というセピア一色刷も立派で、<石狩風景>の白黒一色版とともに、義輝君の二対をコントラストする圧巻でした」と述べている。(資料2)
 この雑誌は昭和4年までのわずか4年間に29号まで出版されたが、坂本家からは創刊号〜6号が寄贈された。
 北海道立近代美術館は平成27年12月19日〜平成28年3月21日「創刊90年『さとぽろとその時代』詩・版画・都市のモダニズム」展を、北海道立文学館はほぼ同時期の平成28年1月30日〜3月27日に開館20周年特別展「『さとぽろ』発見 大正・昭和・札幌芸術に賭けた夢」展を開催したが、伊藤秀五郎、坂本直行についても経歴や作品を紹介した。
資料1:北大山の会会報106号「第八号編集の回想と表紙版画家伊藤義輝」杉野目浩
資料2:「札幌・大正の青春−雑誌「さとぽろ」をめぐって」1978年札幌市教育委員会コピー(宇野彰男氏(慶応登高会、JAC)提供)
資料3:北海道文学館開館20周年特別展資料集”「さとぽろ」発見ー大正昭和・札幌 芸術雑誌にかけた夢”平成28年1月 

 
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