コイカク沢遭難でまとめた7号以来、戦争を挟んで18年ぶりに出たこれまでで最長期間の部報。山岳部の最高目標だった厳冬期ペテガリ初登(1943・昭和18年)を戦争悪化ぎりぎりまで粘って勝ち取り、戦後早くも再開した日高未踏地帯の最後の踏査記録が満載。またマナスル初登の機運で空前の登山ブームを迎えた1950年代、部員も多く活動も盛んで、日高と大雪の全山冬季縦走という大作戦を貫徹している。中身たっぷりの時代ゆえ、この部報にこぼれた多くの珠玉の記録もあったろう。
1941-1958年度の18年分の記録。「冬の日高全山縦走」「冬の十勝大雪縦走」の二大イベントの報告が併せて70p、ペテガリ冬季初登記録を含む日高最後の初登記録五連発記録集「積雪期の日高山脈」が39p。中部日高で最後に残った秘境、ナナシ沢初遡行記含む無雪期記録集、「夏の紀行」が30p。十勝川源流の温泉小屋建設の記録と、犬ソリ研究の二つの報告が32p。追悼が7人で20p。戦死など「物故者略歴」が7p。18年分の「年報」が大量に178pで、合計377p。編集委員は5名の連名。編集後記は杉野目浩。価格は500円。最後のA5判。(敬称略)
看板記録の1956日高厳冬期全山縦走、1951大雪厳冬期全山縦走の二連発と、それに先立つ、ペテガリ厳冬期初登、イドンナップ厳冬期初登、カムエク北面、カムエク南面、中ノ岳厳冬期初登の五大記録を紹介。これでもか!の黄金時代です。
ナナシ沢探査完結編と、幻の大雪温泉小屋建設始末、南極観測隊に貢献した犬ソリ研究の記録、それに数多の遭難者のためにかかれた追悼文の数々。戦前の香りを残し、戦後日本登山界の質量ともに最盛期の時代をすべて網羅した密度の濃すぎる年代をまとめた部報。
【目次】
部報八号の発刊にあたって・・・・・・・・・・・・・・・原田準平
厳冬期の日高山脈全山縦走・・・・・・・・・・・・・・・西信博
冬の十勝、大雪山縦走・・・・・・・・・・・・・・・・・
積雪期の日高山脈
ペテガリ岳〜一九四三年一月〜・・・・・・・渡辺良一、今村昌耕
イドンナップ岳〜一九四八年一月〜・・・・・・・・・・木崎甲子郎
札内岳よりカムイエクウチカウシ山へ〜一九四九年一月〜・・・・・・・・橋本誠二
コイカクシュ札内岳よりカムイエクウチカウシ山へ〜一九五〇年一月〜・・・・・・・・・・山崎英雄
中ノ岳と神威、ペテガリ岳〜一九五三年一月〜・・・・・・杉野目浩
無言の対話・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・伊藤秀五郎
夏の紀行
余市川のほとり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・奥村敬次郎
二つの無名沢遡行記
無名沢よりカムイエクウチカウシ山・・・・・・・・・・・滝沢政治
無名沢よりペテガリ岳・・・・・・・・・・・・・・・・・酒井和彦
夏の知床岳・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鮫島淳一郎
森、温泉、夢〜十勝川源流温泉小舎建設始末記〜・・西村豪、神前博
犬ソリの研究・・・・・・・・・・・・北海道大学極地研究グループ
追悼
奥村先生のことなど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木崎甲子郎
山岳部長奥村敬次郎氏遭難記録
花岡八郎兄を想う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・向川信一
井上君の死・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・佐伯富男
康平君・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・加納正敏
前田一夫君の憶い出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木良博
小竹幸昭の追憶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・佐々木幸雄
加藤君のこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木村恒美
物故者略歴(一九四〇〜一九五九)
年報 一九四一〜一九五八
写真6点、附図4点
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