25.高山深谷 日本山岳会編(にほんさんがくかい)/1933/梓書房/258頁
内容
日本山岳会は、1910(明治43)年から1917(大正6)年までの間に、山岳写真集「高山深谷」8輯を世に出した。本書第9輯は、第8輯から16年ぶりの昭和8年の発刊で、8輯までは会員の手作りで会員のみに頒布されたが、第9輯は梓書房から一般向けに刊行された。写真は50葉が収録されているが、これは会員及び会員外の力作数百点から選別された。それぞれの写真には、会員による随筆が付されている。
「序」で小島烏水は次のように書いている。「顧れば、嚮に『高山深谷』を出した時には、日本の高山、殊に日本アルプスの写真を獲ることは、極めて難しく、登山者も少なかったが、高山の景象を、巧みに撮影し得る人と言っては、更に限られていた。内容は毎輯十二枚程の写真を、各台紙に貼り付けたもので、第一輯の如きは、百部の予約が、半数しか得られず、その他と雖も、百二十五部以上に出たのは、無かったと記憶する。併しそれらの写真は、日本アルプス探検時代を去ること、未だ遠くないだけに、原始の自然は、早期登山者の印画に収められて、同じ山谷の姿にしても、現在のそれと対照すれば、今昔の感に堪えないものがあるばかりか、山川変遷史の、有力なる資料ともなっている。」そして、その後の16年間に、山の題材も写真技術も格段に豊富になっているので、今回作成された写真集は、「形式に於ても、内容に於ても、前の『高山深谷』と異なったものであるから、精神において、前者を紹述すると雖も、効果に於ては、新しい創作である。」としている。
北海道関係では河田黨「冬の十勝岳大砲岩」「富良野シーデポより十勝岳」「冬の十勝岳」、島田巽「厳冬の十勝岳主峰」、角田吉夫「サウス岳」、佐々保雄「千島パラムシリ島赤岳、白煙岳」の6点が収録され、随筆は島田巽、角田吉夫、伊藤秀五郎、加納一郎、佐々保雄が担当している。
なお、第十輯は1941(昭和16)年、アルスから刊行された。
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赤石渓谷/平賀文男/1933 |
登山スキー術の手引/北海道帝国大学山岳部/1933 |