ログイン   :: お問い合せ :: サイトマップ :: 新着情報 :: おしらせ :: 
 
 
メニュー
前 カテゴリートップ

第13回北大山岳館講演会


世界の山々にナキウサギを訪ねる

2019年10月26日(土) 13:30~15:30 image

 10月26日(土)に第13回北大山岳館講演会を札幌市教育委員会の後援で開催します。「世界の山々にナキウサギを訪ねる」の演題で川道武男会員(1951年入部、北大山の会関西支部長、関西野生生物研究所)に講演していただきます。川道会員は北海道大学大学院でエゾナキウサギの研究を始めてから50年もの長きにわたり、ヒマラヤ、アラスカ、中国青海省、モンゴルのフィールドを対象にナキウサギ属の10種の行動を観察してこられました。これまでの研究活動を振り返り、ナキウサギ属とはどのような動物なのか、多様なナキウサギの生態について語っていただきます。

■講演要旨

 私が最初にエゾナキウサギの姿を見たのは、北大山岳部の1年生の夏山で、日高山脈を訪れた時であった。氷河期に山肌を削られたカール・ボーデンにたどり着いたのは、既に夕刻であった。そのとき、鳥のような鳴き声が響き渡っていた。それがエゾナキウサギの鳴き声と気づいたのは、翌朝に岩が積み重なった岩塊帯で動き回る小動物を見たからである。65年前の出来事であったが、今でも鮮明に脳裏に刻まれている。
 3年生に理学部動物学専攻へ進んだが、4年生でヒッチハイクで世界を一周して帰国した。大学院のテーマにエゾナキウサギを選んだ。世界各地で見た野生生物の危機を踏まえての判断であった。
大雪山での夏の観察を終えて、冬にネパールへ行った。ロイルナキウサギは、鳴き声が弱く、越冬用の食物はほとんど貯蔵しなかった。エゾナキウサギで持っていた先入観がみごとに打ち砕かれた。
 大雪山では冬季の観察ができないので、翌年標高500mの北見市置戸町で観察地を探しだし、独りでキャンプしながら、月に1度は置戸町で食物を買い出した。営林署の担当者は車で運んでくれたし、郵便物はバイクで届けてくれた。1年の150日をキャンプ生活して、3年半続けた。ナキウサギ仙人として、NHKや新聞にも取り上げられた。
 エゾナキウサギは体重が200g、ドブネズミ大のウサギである。その社会は基本的にメス同士がなわばりをもち、それぞれに1頭のオスが1頭のメスにつくペアである。特徴は大きく鋭い鳴き声であるが、鳴き声は雌雄で異なる。越冬用の食物貯蔵はなわばり内の数カ所に貯蔵する。

ヒマラヤのナキウサギ

 三浦雄一郎氏のエベレスト・スキー滑降隊に入れてもらい、オオミミナキウサギとロイルナキウサギを観察した。標高の高い方にオオミミが、低い方にはロイルが生息していた。オオミミは標高4000mを超える分布域をもち、5600mまで確認できた。
 この2種は日周活動性が全く違う。ロイルはエゾナキウサギと同じ朝夕型であるが、オオミミは昼間を中心に活動する。その理由は、高所のオオミミが低い気温に対応して陽当たりの良い時間帯に活動するのであろう。

北米のナキウサギ

 アラスカ州にはクビワナキウサギ、ロッキー山脈にはアメリカナキウサギがいる。アラスカ州立大学へ留学し、北極生物研究所に所属し、調査地を定めた。春から秋までクビワナキウサギを観察したが、春の交尾期に雌雄の行動圏が重複するが、交尾期が過ぎると攻撃的になる。共存していた土地は二分され、ほし草貯蔵場所を中心に「ほし草なわばり」を主張し始めた。アメリカナキウサギの社会でも同様であった。鳴き声を録音して声紋を分析すると、同じ声紋を共有していた。
 シベリアにいるキタナキウサギは、エゾナキウサギがその1亜種である。日米の3種を比較すると、北米では共通の祖先をもっていたが、カナダで発達した氷床で分断されたために種分化したと考えられる。

ナキウサギ属の多様性

 20種程度が含まれるナキウサギ属は、生息環境、体のサイズ、社会型、鳴き声、食物貯蔵に多様性が見られる。岩塊帯の隙間で生活する「岩住まい」、草原に自ら穴を掘る「草原住まい」、潅木帯で生活する「潅木住まい」がいる。この多様性は、ナキウサギ属の各種が寒冷気候に出現した幾つかの生態系にそれぞれ進出した結果と考えられる。

■講師紹介

  • 川道武男
    関西野生生物研究所
    1944年富山県生まれ。
    1 966年北海道大学理学部生物学科(動物学専攻)、同大学大学院博士課程、理学博士。
    ナキウサギ、ツパイ、ムササビなど単独性哺乳類の社会を研究。

主な著書

  • 川道武男. 原猿の森 サルになりそこねたツパイ. 中央公論社.
  • 川道武男. ウサギがはねてきた道. 紀伊國屋書店.
  • 川道武男編. 日本動物大百科 哺乳類1. 平凡社.
  • 川道武男・近藤宣昭・森田哲夫編. 冬眠する哺乳類. 東京大学出版会.
  • 川道武男. ムササビ 空飛ぶ座ぶとん. 築地書館.

■会場・問い合わせ先等

  • 会場:北大山岳館 札幌市北区北18条西13丁目(北大構内北西隅、北大恵迪寮東側)
  • 定員60名(予約無し,無料)

問合せ先:北大山岳館運営委員会 携帯090-6870-5120

Facebook: https://www.facebook.com/hokudaisangakukan
E-mail:sangakukan@aach.ees.hokudai.ac.jp

 
Tweet| |
前
第12回北海道の森林変遷史 −花粉化石から復元された15万年間−

 
 
Copyright © 1996-2019 Academic Alpine Club of Hokkaido