第14回北大山岳館講演会
「アフリカの現状と飢饉の克服ー食糧増産による戦略ー
2023 年 10 月 14 日 (土) 13:30-15:30
■講演要旨
- アフリカ諸国における飢餓・貧困割合は大きく、感染症の蔓延、インフラ不備などもあり、社会 の不安定さをもたらしている。また、現在の総人口は約 12 億人であるが、人口増加率は大きく、 21 世紀末には 40 億人に達し、地球人口の過半数を占めると推測されている。この結果、負のス パイラル (連鎖) は著しくなる。
- 多くの主食作物での単位面積あたり収量 (単収) は他地域での約 1/2 である。大陸は地史 学的に長い歴史を持つため、風化土壌に覆われており、作物の生長に必須の養分は欠乏している。 負の連鎖から脱する方策として、農学的な観点からは作物の単収を向上させることが肝要である。
- 肥培管理による生産性の向上には、2大原則 - 最少養分律と報酬低減の法則 - に則るこ とが、生産効率、経済効率の観点から重要である。
- 各種土壌を対象に土壌・植物体を採取、化学分析し、また、イネを供試して養分欠除試験を 実施した。欠乏割合は、ガーナではイオウ (S) で約 80%、リン (P) で 50%、シェラレオン・マダガス カルでは P で約 70% であった。なお、その他の養分 (窒素 (N), カリ (K) など) の欠乏割合は 約 30% 以下であった。換言すると、養分以外の環境条件が制限要因とならない限り、欠乏程度の 著しい養分の単独施与のみによって単収を数倍にすることが可能である。
講師紹介
- 山口 淳一
略 歴:
1960, 北海道大学入学、同山岳部入部;
1965, 北海道大学農学部農芸化学科土壌肥料 学講座卒業、大学院入学;
1966, 北海道大学農学研究科 助手;
2004, 北海道大学大学院農学研究科教授 退官
受 賞: 日本土壌肥料学会・学会賞 (1980)
国際農業研究機関における研究歴:
-
国際稲研究所 (IRRI, フィリッピン. 1965-66);
国際コムギ・ト ウモロコシ研究センター (CIMMYT, メキシコ. 1970-72);
国際熱帯農業研究所 (IITA, ナイジェリ ア. 1980-82).
アフリカにおける研究・調査・技術協力:
-
ガーナ (1993-1994 & 1995, JICA);
ブルキナファッソ (1999 & 2001, JIRCAS);
コートジボアール (1995-1996, JICA);
タンザニア、ザンビア、ウガンダ (2000-2002, 文科省);
シェラレオン (2006-2014, JICA);
マダガスカル (2010-2015, JICA & IRM).
農村における生業調査:
-
中近東、中国、南/東南アジア、南米、南欧諸国.
主な文献 (アフリカ関係):
-
Evaluation of climate on growth and grain yield. IITA, 1981;
アフリカの 米と稲作. 研究ジャーナル, 1985; Sulfur deficiency of rice plants in the lower Volta area, Ghana. SSPN, 1999;
Rainfall declines in western Africa in relation to desertification. Center for Global Environmental Research, 2002;
西アフリカにおける土壌・植物の養分状態. JIRCAS, 2002;
Natural environment and rice culture in Madagascar. PAPRiz/JICA, 2015;
Fertility evaluation of soils in Sierra Leone by a pot culture. SRDP-SL/JICA, 2020.
■会場・問い合わせ先等
- 会場:北大山岳館 札幌市北区北18条西13丁目(北大構内北西隅、北大恵迪寮東側)
- 定員60名(予約無し,無料)
- 新型コロナ感染拡大などが生じた場合、開催は中止または延期します。
- その際には北大山岳部・山の会の HP、Facabook で告知します。
- 問合せ先:北大山岳館運営委員会 E-mail : sangakukan@aach.ees.hokudai.ac.jp
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