まえがき
北大山岳部部長 小泉章夫
2002年6月に現役部員3名の遠征隊がアラスカのデナリ(マッキンリー)峰に登頂した。本報告書はそのいきさつを各隊員が分担して著したものである。北大山岳部がこの頂に足跡を印したのは2度目である。かつて,1972年のマッキンリー隊は,登頂後,カヒルトナ氷河から稜線を北に乗越して,ペーターズ氷河,ムルドロー氷河と渡り歩き,日高方式の登山を実践した。それから30年を経た現在では,デナリ国立公園周辺の登山環境は整備され,4300mのキャンプには医者も常駐している。セブン・サミッツを目指す登山者たちも加わって,シーズン中,その混雑は相当なようである。
とはいえ,一旦,天候が崩れて状況が悪化すれば,6000mを越える高所登山の厳しさはヒマラヤと何ら変わるところはない。1ヶ月におよぶ長期山行であること,国内では体験しえない氷河を抱く山塊の大きさは,現役部員達が日常行なっている山行の枠から大きく踏み出すものであったことは間違いない。また,4年目から2年目まで1名ずつの隊の構成では,リーダースタッフの心労はかなりのものであったろうと察する。予備日を含めた登山期間を一杯に使うことは国内の山行でもあまりない。今回,リーダーが高度障害を発症したにも拘らず,短期間に回復して登山期間内に全員で登頂できたのは,それらの緊張がうまく作用してセルフ・コントロールできたものだと想像するのである。
本文を読むと,隊員がそれぞれに,デナリの山行から感動を得て帰ったことがわかる。そのことを何より嬉しく思う。それらの経験と感情が,今後の部の運営や山行に反映されることを期待したい。最後に,この登山に関わって,かれらをデナリの頂に立たせてくれた学内外の皆さまに厚くお礼申し上げる次第である。
メンバー・日程 |
|
前文 |