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発行日時
2024-4-1 0:49
見出し
イグルーにタープ、ツエルト、テントを組み合わせる
リンクURL
https://igloosky.com/2024/04/01/combining-an-igloo-with-a-tarp-sympletent-and-tent/ イグルーにタープ、ツエルト、テントを組み合わせるへの外部リンク
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18泊の日高全山縦走でのイグルーは4泊。あとは?

前回紹介した先週の北大山岳部OB中川凌祐さんの全山縦走山行でイグルー泊は3ヶ所4泊でした。中川さんはイグルー作りは慣れていて、すぐに作ってしまいます。なのになぜテントを持って行ったのか訊いたところ、丁寧にこたえてくれました。

山行記録: 日高山脈主稜全山縦走(芽室岳~楽古岳~襟裳岬)
2024年03月06日(19日間) 日高山脈, 積雪期ピークハント/縦走 / Nakagawa2019の山行記録

?イグルーでは濡れが乾かない

イグルーだと製作時にウェアが濡れ、寝てる時に吹き込みによりシュラフカバー等装備がどうしても少し濡れてしまいます。長期戦を考えると濡れものは重くなるし不快なのでそれらをしっかり乾かしてから進みたいのですが、冷えにくいけど暖まりにくいイグルーだとストーブを炊いても乾きにくく、ガスが勿体無いと考えました。テントの場合濡れは行動中に生じるもののみで、ウェアは炊事しながらの着干し、グローブやソックスは上に洗濯バサミで吊るしておけばほぼ乾きました。

確かにそのとおりです。イグルーは、ストーブをたいてもテント内が暖まるようにはなりません。吹き込む粉雪も、不評です。この「濡れ」をどう受け入れるかですね。

八の沢右岸尾根Co1700(9:00)=C6=C7強風帯なので支尾根に下ろして風を避けた。巨大ブロックの風よけは必要。

?風の弱い支尾根に降りてテントを張る選択肢

悪天や緊急時に風下の支尾根に逃げ込んでテントを張るという選択肢を持っておきたかったという点です。実際降ろすかどうかは別にして、そのような状況下で様々な選択肢を持っておくのは単独行において精神的に良いと感じました。今回、C6=C7,C9はそのような使い方でした。支尾根に下ろしてイグルーよりテントを使うのは1つ目の理由が大きいです。

選択肢を多くするため。これもわかります。

?キツい行程の最後にイグルー作るのが辛いときもある

30kg以上の荷を背負い10時間を超えるような行動をした後イグルーを作るというのを連日やるのは身体的に厳しい気がしたからです。特に腰が怖いです。勝亦さん*も全山の際、腰を痛めイグルー製作を断念した日があったようです。

重いブロックを扱う作業です。たしかに重心の配り方を誤ると痛くなります。私も講習会で一日に5つも6つも作って見せるときなどは腰に不安を感じます。単独の長期山行ならではのリスク想定です。*北大山岳部で2015年に日高全山縦走をした勝亦浩希

ルベツネ山手前1688南東尾根頭C10。12.5時間行動の後氷混じりの雪面を開削して無理矢理止まる。イグルー作るのはしんどい時もある

重さ・雪壁作り・朝のテント撤収のデメリット

それらのメリットとデメリットを天秤にかけて最終的にテントを持っていく判断をしました。再挑戦を考え始めたのは昨年の8月くらいだったと思いますが、そのタイミングでテントを持っていくのは決めてました。なので多少重くなっても背負える身体を作り、入山したら朝はイグルーの時より睡眠時間を少し削って解決しました。
また、去年の事故以降、地形をより大きく把握する癖を付け、気圧配置と近くの沢の向きや沢の大きさから海からの風がそこにどのくらい集まるかをイメージしてテンバを選びました。これはイグルーでもテントでも大事ですね。

イグルーといえども強風の場所では徐々に壁が削られます。特に強風のために積雪が無いくらいハイマツや地面が近くに見えているような所は、今はイグルーを作れる積雪があっても多少風向きが変わると、雪が削り取られる可能性があります。

カムエク北のコルでΩ5、強風エリアで背後は雪が飛ばされ露地が見えている

強風地帯の3ヶ所はイグルーが頼りだった

去年はイグルーが目的になってしまっていた感が否めませんでしたが、今年は前進のための武器として使えたと考えてます。今回イグルーを採用したタイミングは、吹きさらしで強風地帯のカムエク手前、ナナシの吹上の1823峰、2つ玉低気圧襲来で停滞した神威手前でしたが、どれもイグルーを作る労力を費やす価値のある局面だったと思います。

暴風雪でのテント泊はブロック壁で風を防いでもテントへの雪の吹きだまりは避けられず、積雪で押しつぶされないよう夜中でも除雪しなければなりません。イグルーはこの点が非常に優れています。中川さんはイグルー経験を自信にして、この強風帯を進めることができたといいます。

神威岳手前のコルでイグルー+テントのハイブリット型Ω12,13。快適に2泊

イグルー+テント

イグルー内テントうまくいきました。動機はせっかくテント持っているしイグルーと組み合わせて双方のメリットを組み合わせた快適空間で停滞し身体を休めたかったからです。結果としてテントは一切風に煽られず、内部はポカポカ、ちょっと入ってくる吹き込みはテント膜が遮断という思い描いた通りになりました。黒部横断で雪洞テントがよくやられるそうですが、それやるならイグルーテントの方が積雪少なくても可、短時間で作れる、生き埋めや酸欠の心配は少ないといったように有効なんじゃないかと思いました。

イグルスキーも初期の頃、イグルー+テントやりました。4人用エスパースだったので、巨大イグルーになりました。いまは、テント持って行くほどの動機がないのでやっていませんが、確かにテントを持って行っているのならハイブリットで最強です。

昨年の奥美濃県境山行でのイグルー+タープ

イグルー+タープ

イグルスキーが最近やるのは、タープをイグルーの外側にかぶせて、四隅の紐をピッケルやストックやハイマツに縛って固定する方法です。隙間からの吹き込みが無く、気温の特に低い夜は暖かく過ごせます。

ブロックの隙間から張り綱を出して、外で固定する。ツエルトの出入り口とイグルーの出入り口を合わせる。

イグルー+ツエルト

イグルー内にツエルトを張る方法を考えました。ツエルトは必携品だから、憶えておきましょう。8割ほどイグルーを作ったら、ストックを、ツエルトのベンチレーターに通した後、ストック2本をバンドなどで2ヶ所で縛り、長い梁を作ります。梁を、イグルーの入り口方向に向けて壁にかけ、残りの屋根を塞ぎます。前後の張り綱はストックに沿って外に出しておきます。梁があるから、屋根も塞ぎやすくなります。イグルーが完成したら、中でツエルトを広げ、梁綱をブロックの隙間から外に出して、周りの雪の中にハイマツの枝などに絡めて埋めて固定します。ツエルトの側面の梁綱も、ブロックの隙間から外に出して張ります。こうすると、イグルー内ツエルトが張れて、ストーブを焚けば暖かく、隙間からの吹き込みも防げるハイブリッドイグルーができます。

 
 
 
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