12.大雪山 登山法及び登山案内 小泉秀雄(こいずみひでお)/1926/大雪山調査会/403頁
小泉秀雄(1885-1945)、植物学者、登山家
山形県米沢市に生れる。1904(明治37)年、東京府立順天中学卒業、同年盛岡高等農林学校に入学するも家庭の事情により退学。1907(明治40)年、試験検定により師範中学、高等女学校理科教師免許取得。山形県内で中学校に勤務の後、1911(明治44)年、道立上川中学校(現旭川東高)に理科教師と赴任。以後旭川を離れるまでの9年間、寸暇を惜しんで大雪山全域を踏破、地形・地質調査と植物採集を行う。「山岳」に「大雪山登山記」(第11年3号)、「北海道中央高地の地学的研究」(第12年2、3号合本)の先駆的な記録を発表した。大雪山調査会の依頼により今までの研究調査の結果を、「大雪山 登山法及び登山案内」にまとめ、1926(大正15)年に刊行した。高知県第三中学校、長野県立女子師範学校を経て、松本高等学校講師。1933(昭和8)年、共立女子薬学専門学校教授に転じ、現職で死去した。後に膨大な植物標本と詳細を極める手書きの大雪山山岳図、植物図譜などが残された。
内容
大雪山を世に広く宣伝する目的で、1924(大正13)年に組織された「大雪山調査会」の依頼で小泉が執筆し、大正15年刊行された。新書版の大きさで403ページの大部である。構成は2編からなり、第1編は登山技術と塩谷温泉(現:層雲峡温泉)並びに松山温泉(現:天人峡温泉)からの登山案内、第2編は大雪山の名称由来、地形・地質、気候、動植物など学術調査報告、さらに巻末には「高山植物の保護区域の設定」の必要性を訴え、自然保護の先駆的役割を果たしている。写真図版、地形図、スケッチが69図挿入されている。スケッチは著者自身の手により、科学者の目による精密で美しいものである。小泉は本書で大雪山という名称を山群の総称としたほか、個々の山の命名もしており、そのほとんどが現在に引き継がれている。
山岳館所有の関連蔵書
日本山岳会 山岳第11年3号、第12年2,3号
日本山水紀行 大町桂月/1927/帝国講学会
大雪山のあゆみ /犬飼哲夫編/1965/層雲峡観光協会
登山歴程 /児島勘次/1973/日本写真印刷
大雪山わが山小泉秀雄 /清水敏一編/1984/白楊印刷
大雪山わが山小泉秀雄(続) /清水敏一編/1984/白楊印刷
小泉秀雄・植物図集 /1995/小泉秀雄・植物図集刊行会
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岩登り術/藤木九三/1925 |
山の人生/柳田國男/1925 |