ログイン   :: お問い合せ :: サイトマップ :: 新着情報 :: おしらせ :: 
 
 
メニュー
前 カテゴリートップ

第10回北大山岳館講演会

未だ存在しない将来世代のための「新しい山道」創り
―山や森、高原や湿地の環境回復に向けたフューチャー・デザインを―-

2017年6月3日(土) 13:30~15:30

要旨
 将来世代は存在しないため、彼らの声は届きません。美しい山や森など、将来世代に残すべき自然資源を現世世代は惜しみなく奪っています。これを避けるためには、物言わぬ将来世代に代わって奪われた自然の回復を目指す「フューチャー・デザイン」が必要です。
 どんな山や森、高原があっても「道」がなければ訪れることができません。自然に触れるには「道」が必要です。美しい自然に囲まれた人気の遊歩道や登山道にはたくさんの人が訪れます。たくさんの人が訪れれば訪れるほど自然の植生は踏み荒らされ、足元の土が露出し、雪解けの度、雨が降る度に表土が流されて、荒廃が広く深く進行していきます。
 荒廃の進行を防ぐために木道や土止め階段の建設、蛇籠の設置、あるいは歩道の積極的水路化などが行われています。いずれの工法も大なり小なり現場の土木工事を必要とし、補修の度に縦杭を土中に埋設したり、土石を動かすことで土壌構造の攪乱を繰り返しています。土壌構造の攪乱は、地表水の出現時に表土を剥離しやすくするので、こうした土木工事は長期的にはむしろ登山道の洗掘と荒廃を促進しているケースが多く、残念ながら自然の環境、特に植生の回復に十分役立っている、とは言えません。
 自然は動植物の生態系を含めたその存在自体が貴重なのであり、現世の人間のためにのみ存在するのではありません。貴重な自然の中の「道」の改修は、現世世代の歩行の安全と快適さの確保を目的とするのではなく、将来世代のためにそこに元々あった自然環境の回復を目指すべきと考えます。荒廃をもたらす根本原因は歩行者の地表踏圧ですから、この踏圧を排除できる改修工法を採らねばなりません。
 現世世代のための「登山道としての機能の確保」と、未だ存在しない将来世代のための「環境回復」、この両立は荒廃した「道」を前にすると、一見不可能と感じるかもしれません。しかし可能です。植生や土壌の形質変更なしに両者の両立を目指して考案した工法(特許申請中)をご紹介します。踏床を地表から浮かすことで、日照と雨水を表土に降り注がせ、自然が本来の平衡状態に戻ろうとする「自然の免疫力、治癒力」を利用する工法です。皆様の賛否をお聞かせ下さい。

■講師紹介

  • 松田 益義(まつだ ますよし)
    株式会社MTS雪氷研究所代表。
    • 理学博士(北大)、技術士(応用理学部門、地球物理および地球化学)。
    • 昭和21年11月10日 神奈川県に生まれ、高校時代は山岳部に所属し丹沢や日本アルプスに親しむ。
    • 北大理学部で地質学を学び、探検部等で大雪山や日高で遊び、北大低温科学研究所応用物理部門で大雪山の多年性雪渓の研究をする。その後メルボルン大学の気象学研究室とオーストラリア科学省南極局氷河部門で南極氷床氷の結晶構造学的研究をした後、実業の世界に転じて(株)自然環境科学研究所で融雪、着雪や路面凍結のコンサルティング業務に従事した。1985年に(株)MTS雪氷研究所を創設し、以来、気象と雪氷のコンサルタントとして大雪災害の軽減化等の防災上の技術課題に取り組む。
    • 一方で、千葉大学(非常勤講師)や山口大学(客員教授)などで環境政策を講じ、国際的な取組みから国、自治体、企業、学校、地域、家庭を経て個人のレベルまで、環境問題を分断せず連結・連動させて把握することの重要性を訴えた。
    • 10年程前「尾瀬保護財団」から「尾瀬国立公園 至仏山登山道迂回路案の妥当性検討」に関する環境調査専門委員を委嘱された際に、登山道の荒廃実態を調査してその原因究明に携わった。実務家としては原因究明で終えずに、荒廃を防ぐ具体案を提示し、妥当性を検証して、現場に実装するまで牽引したいと考えている。
    • 公益社団法人日本技術士会理事、同応用理学部門副部会長、公益社団法人日本雪氷学会副会長、同理事・監事、日本雪工学会理事なども務める。
    • 登山道に関係する近年の主要な論文・論評:○21世紀の雪環境と雪氷災害、日本雪工学会誌Vol.24、No.4、2008 ○登山道荒廃のメカニズムと積雪の役割−尾瀬至仏山のケース・スタディ−、雪氷研究大会(2013・北見)、2013 ○登山道のワジ化とその対策、雪氷研究大会(2014・八戸)、2014 ○登山道の荒廃を防ぐ新しい工法、自然保護(日本自然保護協会誌)No.543、2015 ○2014年2月大雪時の東京都心部の雪観測と雪荷重評価、雪氷77巻4、2015 ○積雪が稀な地域特有の雪氷災害、シンポジウム「関東の大雪に備える」気象庁、2016 ○登山道修復の新しい設計思想と工法、北の自然(北海道自然保護協会会誌)No.54、2016
    • 著書等:「防雪技術ハンドブック」(編訳)、「雪と氷の事典」、「雪氷辞典」、「自然災害ハンドブック」、「防災ハンドブック」ほか
    • 取得特許:「歩道」、「3次元雨量計」、「着雪防止」ほか  受賞:第2回寒地技術賞

    ■会場・問い合わせ先等

    • 会場:北大山岳館 札幌市北区北18条西13丁目(北大構内北西隅、北大恵迪寮東側)
    • 定員60名(予約無し,無料)

    問合せ先:北大山岳館運営委員会 携帯090-6870-5120

    Facebook: https://www.facebook.com/hokudaisangakukan
    E-mail:sangakukan@aach.ees.hokudai.ac.jp

 
Tweet| |
前
第9回ホモ・ヤマルーデンスの科学論・大学論 ―山系クラブの副産物的存在意義―

 
 
Copyright © 1996-2017 Academic Alpine Club of Hokkaido