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山の会昔語り・ 2007年1月24日 (水)

山の会裏ばなしー(19) ナンガパルバットとカンチ
ナンガパルバットとカンチ

                     北大山の会東京支部・木村俊郎(1950年入部)
夏山二回と冬山二回の主な山行と二回の十勝の合宿が終わると三年目である。三年目になると三年下の後輩が入って来るのが当然だが、この頃になってやっと後輩が出来たような気がするものである。そして山岳部独特のアダナで呼び合える仲間が増えてくる。後輩のN君は、そのもう一つ下になるのだが彼は入部早々からもう「ナンガ」なる通称が付いていたようである。ナンガパルバットに由来するものらしかった。新入部員か歓迎会にはナーゲルを履いて現れたが戦後、新品のナーゲルを履いて来たのは
彼が最初だったろう。

ルームでタムロしていたある日、ナンガの一年先輩のK君が
「俺はKだからカンチェンジュンガのカンチにしてくれ」と言った。
すると小生と同輩のT君がすかさず
「お前カンチでなくて、『チカン』だべさ」と切返した。
古来アダナは、「自然発生的なるものなり」などと尤もらしく言っていた。ある夏山で、ずっと後輩の本多和彦君の馬力を称賛したら、ご本人が
「マムシゲンジと呼ばれた父親譲りの性格だ」と、
オヤジまでひきあいに出したという彼への追悼を会報で読んだことさえある。

しかしアダナは、名は体が現すものから、正反対や無意味のものまで様々のようだ。小生など前者の最たるものだろうが、呼びやすく分かり易いのが最良。でも『チカン』では使い物にならず全く定着しなかった。ともあれ今回の話題の主、K君はチカンでもストーカーでもないマジメ一途だったという蛇
足を名誉のために付け加えねばなるまい。

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