書評・出版・ 2025年1月30日 (木)
【読書備忘】未踏峰と三江併流ーヒマラヤの東 最後の辺境ー 米山悟(1984年入部)

ナカニシヤ出版 2021年 8800円 226p
アルパインクライマーよ、世界最後の辺境にはこれだけの未踏峰が未だあるのだよ!と呼びかけているようだ。


空撮を含む写真はもちろん素晴らしいが、地形図が豊富だ。中国領がほとんどなので尾根型と谷記号のみで等高線まではないが、苦労して集めたものなのだろう。見ているだけでうっとりする。色鉛筆で模写して憶えたくなる図だ。

●揚子江(長江)上流部名・金沙江(チンシャジャン)→東シナ海(上海)へ
●メコン川 上流部名・瀾滄江(ランツァンジャン)→南シナ海(ベトナム)へ
●サルウィン川 上流部名・怒江(ヌジャン)→インド洋(ミャンマー)へ
+更に1本の
●イラワジ(エーヤワディー)川支流の独龍江(ダロンジャン)→インド洋(ミャンマー)へ にギュギュッと圧縮され挟まれた山脈が東からタテに合計4本。地球上で最もしわくちゃな地域だ。
7000m峰の貢嗄山(ミニャコンカ)、6000m峰の梅里雪山(メイリシュエシャン・カワカブ)は日本隊も関わり知られているけれど、その他にもこんなにたくさん未踏の山頂もルートもある。 横断山脈に加えて、ヤルツァンポ川→ブラマプトラ川→ベンガル湾の大屈曲部周辺の山々の紹介もある。ここは7000m峰のナムチャバルワとギャラペリだけは日本隊にも縁があり知られているが、その他の山々、それにブータンヒマラヤのガンケルプンズムと周辺、チベット高原のニェンチェンタングラ山脈と、かなり広範囲が対象。
改革開放の80年代後半から90年代半ばにかけ、日中登山界は親しかった。私はNHKの番組取材で1991年ナムチャバルワ、1996年チョモラーリの登山隊に加わった。この時期は日本山岳会、ヒマラヤ協会を始め多くの登山隊がチベット未踏峰に向かったが、90年代終わりくらいからは尖閣諸島問題やチベット問題などもあり、また、日本の海外登山層の変化もあり、このエリアへの関心はそれ以来ずっと高まらないままの印象だ。

ヒマラヤの東 山岳地図帳
日本山岳会創立110周年記念出版 日英中国語ナカニシヤ出版
2016年刊 10000円
今回はそのよりぬきで写真セレクト版というかんじだろうか。前作は地図が主体で日中英3ヶ国語で文章豊富。今回の本は、文章は少なめで写真が大判。6000m未踏峰の一覧が特徴的。
日中英語の表記で、中国語音のアルファベット表記は少しクセがあり素直に読むと違う音の字がある。しかもチベット語に漢字を当てたその漢字音韻をアルファベット表記したものなので、かなりひっくり返っていて、とてもカタカナに表記する勇気がない。中国語(北京語)のカタカナ表記は、対応する日本語カナが無くていつも苦労する。と思えば有名峰や大きな山脈名以外の、個々の山頂名などは漢字化されず、チベット音そのままアルファベット表記も多い。漢族がまだ表記していないということかもしれない。

p80 Pk5630m峰とPk5640m峰 Gonrpu Gl.Y'iong Tsangpo
p81 Hayungarpo6388m 北面 Nye Qu north of Y'iong village

p112 Pk6350m峰北東面 Lhagu氷河中流より
p113 Pk5480m峰北面 Lhagu氷河中流より

p116 Pk6726m峰 カンリガルポ山脈の第三高峰(後ろ)、Zyaddo峰6025m(手前)
p117 Lhagu氷河、Gongyada 6432m(左)、Zeh 6127m(右)

p134 DungriGarpo6090m(左)、PK6070m峰(右) Markamの西から見た北東面
p135 DungriGarpo6090m北東面 Yu Qu盆地

p144 Holy Mianzim6054m(左)Jiajiren-an(Five Crown Peaks)5470m(右)梅里雪山 雲南西藏境
p145 Jiajiren-an(Five Crown Peaks)5470m 東面 梅里雪山
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