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書評・出版・ 2015年8月11日 (火)

トレイルランナーヤマケンは笑う(米山悟1984年入部)
トレイルラニングの日本代表選手クラス、ヤマケンの自伝。人の根源の力を発揮するのを阻むブロックのひとつは慾で、それを外していくと力を最大限発揮できる(96p)。これまで競技に縁は無かったけれど「山」という共通点で読んでみました。おもしろかったです。
山本健一
2015.7

トレイルラニングという新ジャンル、ここ数年で人気です。山は皆のもの、自分の体ひとつで挑むなら、どんな楽しみ方の人であっても寛容でありたい。けれども僕自身は、「競技であること」、「大勢で登る事」にあまり魅力を感じません。それでトレイルラニングはずっと人ごとだったのですが、職場の若いトレイルラナーの青年に一読を勧められ、またヤマケンが同時代同地域の山やさんなので読んでみました。少し前NHK-BSでやっていたレユニオン島のレースのドキュメンタリ番組も見ました。
やはり興味深いのは、人間の根源の力がその枷をかなぐり捨てて表出する可能性です。著者に寄れば、人に勝ちたい、順位を上げたい、という慾が消えた時、会心の走りが訪れ、更には、野生動物にかえった域を体感するといいます。24時間以上も山と空の境を走り続ければ、未知の境地もあろうと思います。このあたりの心境はたぶん、修験道者の体験した山岳修行や、「炎のランナー」(1981年)で、神に感謝するために走ったスコットランド人宣教師リデルの境地だろうか。ヤマケンさんは感謝の気持ちで笑顔になるといいます。
ヤマケンという人間が素直な性格で、周りの人たちにも恵まれ、当たり前の日常を丁寧に生きる事ができる人なんだと思います。あった事は無いですが。
楽しそうに走っている写真も良い本です。ヤマケンさんを慕って、良いカメラマンが撮っているのだと思います。
さて、私がトレランに馴染めなかった二点、
「競技であること」については、もはやヤマケンさんは競技を越えていました。
「大勢で登る事」については、「一人で走ってもつまらない」と書いています。声援送って、助け合って、喜び合う。もちろんそういう人たちが山を楽しむのに賛成です。山は皆のものだと思います。
モンブラン、富士山、ピレネー、アンドラ、レユニオン。ヤマケンさんの地元は、甲斐駒ケ岳の黒戸尾根、根っからの甲州人です。
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